フェチ映画

 映画の細かい共通点から勝手にジャンルをつくり、フェチ別(趣味趣向別)におすすめの映画を紹介します。

リメンバー・ミー【微ネタバレ】感想や考察「夢は呪いなのか?」

リメンバー・ミー オリジナル・サウンドトラック

 先日、アカデミー賞(長編アニメ映画賞、主題歌賞)を受賞したピクサーの長編アニメーション映画『リメンバー・ミー』

 今回は、そんな『リメンバー・ミー』の感想や考察、序盤のあらすじなどをネタバレ控えめに紹介します。

『リメンバー・ミー』の概要

上映時間:109分
公開年:2017年
制作国:アメリカ
監督:リー・アンクリッチ
脚本:エイドリアン・モリーナ
出演:アンソニー・ゴンザレス、ガエル・ガルシア・ベルナル、ベンジャミン・ブラット

 メキシコの【死者の日】を題材にしたピクサー19作品目の長編アニメーション映画。ミュージシャンを夢見るメキシコの少年ミゲルが、ひょんなことから死者の国に迷いこんでしまうというストーリーです。

キャッチコピー

『それは、時を超えて家族をつなぐ、奇跡の歌。』

死者の日とは?

メキシコ シュガースカル(ドクロ)ステッカー(シール)|メキシカンスカル|カラベラ|死者の日

 家族や友人たちが集まり、この世にもどってくる故人の魂を迎えるお祭りの日。音楽を奏で、カボチャをかざり、ガイコツメイクの仮装をしたりと、にぎやかにとり行われるそうです。

 なので、日本でいうところのお盆にハロウィンをプラスしたようなお祭りの日、という認識で映画を観る分には問題なさそうです。

あらすじ(序盤)

 ミュージシャンを夢見るメキシコの音楽大好き少年ミゲル。けれども、彼の家には音楽に触れてはいけないという厳格なオキテがありました。 

 そのオキテの原因は、ミゲルの高祖父(ひいひいじいさん)ヘクターにあります。ヘクターはミュージシャンになる夢を追いかけ、家族(妻:イメルダと娘:ココ)をのこして家を飛び出してしまったのです。

 それ以来、一族に音楽禁止のオキテが根付き、ミゲルは楽器に触れることはもちろん、音楽に耳を傾けることすら許されないのです。そのうえ、ミゲルは本人の意志とは関係なく家業の靴作りを継がされようとしていました。

 ですが、ミゲルの音楽に対する情熱はそれ以上でした。彼は屋根裏であこがれのミュージシャン、デラクルスの曲を聴き、家族に隠れてこっそりとギターの練習をしていたのです。

 そして死者の日、ミゲルは祭壇に飾られた家族写真を見て高祖父のギターとデラクルスのギターが似ていることに気づきます。(写真の高祖父は顔はちぎられているので断定はできない)

 ミゲルはデラクルスが曾祖父だと推測し、自分はミュージシャンになるために生まれてきたんだと思いこみます。

 しかし、彼が死者の日の夜に行われる音楽コンテストへの出場を決意した矢先、家族に見つかりギターを壊されてしまいます。

 ギターを失ったミゲルはデラクルスの霊廟(大きなお墓)に忍び込んで祭壇に供えられている彼のギターを盗んでしまうのですが、それをきっかけにミゲルは死者の国に迷いこんでしまうことに・・・。

感想や考察

 さすが、天才集団のピクサーです。死者の国に行って観客たちがある程度のシステムが理解できた頃合いに、さっそく物語を盛り上げる要素を仕込んできます。

 夜明けまでに家族の許しを得なければいけないというタイムリミットをもうけてハラハラさせ、ミゲルとともに旅をするようになった身寄りのない死者は何者なのか? という謎で観客の興味を惹きます。

 この謎も、単純な謎に見せかけて短編小説の名手、連城三紀彦や阿刀田高のように見事な反転を決めて着地します。(というのはホメすぎで勘のいい人にはバレバレかも)

 そして、全体的にいい意味で予想を裏切ってくれるストーリーでした。どれくらい予想を裏切るストーリーだったかというと、わたくしフェチ映画は、こんなふうに裏切られました。

感想:いい意味で期待を裏切るストーリー

開始10分ごろ

 なるほど、これは音楽大好きな少年が「オラ、こんな家イヤだ!」と吉幾三風に家を飛び出して夢をつかむパターンのよくあるお話ですね。

 オーケー、レッツゴー。ピクサーさん、つづきをどうぞ。

開始20分ごろ

 コンテストに出場したいのにギターを壊されて楽器がない!?

 ふむふむ、これはあのパターンですね。自分の体こそ最高の楽器なんだと気づいて、丸腰でコンテストに乗り込み、ワキで安室奈美恵の『トライ・ミー』(ノブシコブシ風に)を演奏して優勝する展開のやつ。

 ハイハイ、なるほど、邦題の『リメンバー・ミー』は『トライ・ミー』の伏線ってことでしょ?

 ピクサーさん、バレバレの伏線おつかれさまです!

 あとは『ベスト・キッド』のミヤギや『ドラゴンボール』の亀仙人の修行みたいに「あれ? 俺、いつのまにこんなに強くなったっちゃったの!?」のパターンなんでしょ?

 イヤイヤやっていた靴作りの手伝いで鍛えられたおかげで、ワキからすごいボリュームの音が出せるようになってる展開でしょ?

 すべては偉大なミュージシャン、デラクルスの血を引く家族の仕組んだことだとわかって最後は、舞台袖から演奏をのぞいていた家族とミゲルの目が合い、微笑み合ってエンディングに突入するんでしょ?

 天下のピクサーさんも、この程度ですか。

 ・・・などと自分の洞察力にうぬぼれて、座席にふんぞり返っておりました。

開始30分ごろ

 あれ? ミゲルが死者の国にいっちゃったよ? 夜明けまでに、家族の許しを得ないと一生もとの世界にもどれないって!?

 しかも、ミゲルの先祖たちが出した条件は今後、音楽に触れないことだって!?

 あまりの驚きにポップコーンをこぼして座席の背もたれを蹴られる始末でした。

 とまあ、冗談はさておき・・・非常に引きこまれる物語でした。

考察:人はいつ死ぬのか?

 このように洞察力のない私にもリメンバーミーは死について語っている映画だということは理解できました。

 リメンバー・ミーでは死者の国に入ったあと、ミゲルに夜明けまでの期限で死のタイムリミットが設けられます。

 それだけでなく、死者の国ではすでに死んでいる者にも死が存在しています。この世にいる人たちに忘れられると死者の国からも消滅してしまうのです。

 鑑賞中ある、作品が頭をよぎりました。

 同じく夜明けまでを描くパターンの作品は映画『フロム・ダスク・ティル・ドーン』やゲーム『アンティル・ドーン』などがありますが、ちがいます。

『リメンバー・ミー』を観て頭をよぎったのは「人はいつ死ぬと思う? 人に忘れられたときさ。ドーン!」(ワンピース)です。

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 ファンタジーな設定で死者の国という存在を描いておきながら死のシステムはすごく現実に通じるものがありますよね。さすがピクサー。スピリチュアルなものを信じない私にもすんなり受け止められます。

 つまりは、死者の国や天国などはこの世にのこされた者の心の中にしか存在しないんです。だから、故人のことを忘れないで。死んでいった私を忘れないで。「リメン・バーミー」ってことなんですね。

 ワキで奏でる安室奈美恵の『トライ・ミー』の伏線だと勘違いしていた私はとんだオオバカヤロウってことです。

考察:夢は呪いなのか?

 鑑賞中、実はワンピースともうひとつの作品が私の頭をよぎっていました。同じくピクサーのアニメーション映画『カールじいさんの空飛ぶ家』です。

『カールじいさんの空飛ぶ家』は個人的にピクサー映画のベスト3に入るくらい好きで感動的な作品なのですが、『カールじいさんの空飛ぶ家』は夢の持つ呪いのような力、悪魔的な魅力についても描かれている作品だと思っています。

 夢を追いかけるものは幸せになるか、破滅するかのどちらか。夢の魅力におぼれてしまった人はその身を滅ぼしてしまうのです。

 そして、夢というものは地下労働施設で仕事の後に飲むキンキンに冷えたビールのように悪魔的な魅力があるのです。

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 夢との付き合い方を考えて距離を置いているつもりでも「下手だなあ。〇〇〇くん。へたっぴさ」と班長・・・悪魔がささやき、いざなってくるのでキッパリとあきらめられる人はほとんどいません。

ピクサーの【夢は呪いだ】作品

『リメンバー・ミー』でも夢の呪いのような一面が描かれています。ミゲルの高祖父のヘクターは夢で自分だけでなく家族も不幸にしてしまっていますよね。そして、その呪いはミゲルの代までつづいている。

 ミゲルはミュージシャンになる夢に取り憑かれて死者の国に行ってしまいます。そこで彼は生と死のあいだをさまよう存在になるのです。(夢を追うことは死と隣り合わせ)

 一度、この世にもどってきたのに、すぐにまたギターを盗んで死者の国にもどってしまう展開もありますよね。これはもう完全に呪われています。

『リメンバー・ミー』も『カールじいさんの空飛ぶ家』につづくピクサーの【夢は呪いだ】作品だといえるのではないでしょうか。

考察:死者の国=夢の国

 これは完全に私の妄想なのですが、死者の国とは生者が望む夢の国ではないでしょうか?『ドラゴンクエスト6』の夢の世界(幻の大地)の存在に似ていると思います。

生者の望みが反映される夢の国

 ミゲルの家は靴を作っていますよね。でも、死者や幽霊には靴が必要ない!!(残念ながら劇中では死者の国の人たちも履いています)

 つまりは死者の国は靴からいちばん遠い世界なのです。家業を継ぎたくないミゲルにとっては夢の国。野良犬のダンテも死者の国で別の存在へと変貌しますよね。

 そして、先祖たちが元気で幸せに暮らしていてほしいという子孫たちの願いが反映されているように思います。死者の世界は見た目も鮮やかで足もとには故人を想って供えられたマリーゴールドの花びらが敷き詰められている、などなど。

まとめ

『リメンバー・ミー』はおもしろいか、おもしろくないかでいうと、もちろん面白い映画です。

 CGやアニメーションは相変わらずキレイで、もはやスゴイのが当たり前になってしまっているレベルです。

 ただ不満な点ももちろんあります。でも、それはガッツリとネタバレしないと書けないので劇場公開が終了するのを待つことにします。

さいごに

 さいごに『リメンバー・ミー』はどんな映画と共通点があるのかフェチズム要素を分析したいと思います。

「フェチズムって何?」と気になる人はこのブログについてで説明しているので読んでみてください。

 まず、死者の国でタイムリミットを設けられるので【夜明けまでがタイムリミット】の映画と共通点があります。

 つぎに、死者になりすまして音楽コンテストに出場しようとする展開があるので【なりすまし・誤解】もの映画と共通点があります。

 さいごに、夢の呪いのような一面が描かれているので【夢は呪いだ】映画と共通点があります。

『リメンバー・ミー』と共通点のある映画

【夜明けまでがタイムリミット】の映画

『フロム・ダスク・ティル・ドーン』
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』
『30デイズ・ナイト』など

【なりすまし・誤解】映画

『デーヴ』
『プリズン211』
『21ジャンプストリート』
『ミセス・ダウト』
『鍵泥棒のメソッド』
『ブルー・ストリーク』など

【夢は呪いだ】映画

『カールじいさんの空飛ぶ家』

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最後まで見てくれた方、感謝です